『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』文章保管用ブログ。
Posted by ささら - 2009.02.05,Thu
一月末の話。
博士の紹介を受けて、彼女は会釈した。黒を基調とした服で、スカート部分はスリットが入っている。ところどころ金色があしらわれていて、気品が漂っている。
その雰囲気に呑まれながら、ミクははじめましてと言って手を差し出した。桃色の髪のボーカロイド、巡音ルカは素直にミクの手を握って言う。
「形式V03-01MR、巡音ルカです、ミク先輩」
「こんにちは。形式V01-01HM、初音ミクです」
ルカはミクより少し低い声で、表情を動かさず挨拶した。
その無表情さに、まだ慣れてないのかなとミクは思った。
いずれ慣れれば笑ってくれたりもするだろうから、急ぐことはないと考え、にこやかに笑ってよろしくねと言った。
「形式V00-01MY、メイコよ。ボーカロイドとしては長いほうだから、質問があったら聞いて」
ミクの一歩後ろにいたメイコがルカに言う。
メイコは起動してから四年と少しだが、今活動しているボーカロイドの中では長いほうだ。
「メイコ先輩はボーカロイドの草分け的存在だと伺っています。いくらか歌や映像も見ております」
「あら、うれしい」
「はい。よろしくお願い致しします」
無表情で、しかし少し早口気味に話すのを見て、ミクはルカがメイコに憧れているのだろうと思った。
なんだかメイコがうらやましい気がしたが、同時に当たり前だとも思った。メイコがボーカロイドの草分け的存在なのは本当だし、ミク自身尊敬している。
ふと玄関の方が騒がしい。だんだん音が近づいてきて、騒がしい原因がわかった。リンとレンだ。リンはいつもの如く寝坊、レンはリンを起こしに行っていた。
「わ、もう来てる。レン遅ーい!……あ、はじめまして、形式V02-01KL鏡音リンです」
「リン待てよ!……あ、どうも。形式V02-02KR、レンです」
「よろしくお願い致します。先輩」
「えへへ、どうも」
「こら、リン遅い。レンも、リンが起きそうになかったらとりあえず来なさいって言ったでしょう」
「メイコ姉、ごめんなさい」
「ごめんなさい」
リンとレンはメイコに怒られて、しゅんとしてしまった。そんな様子にルカはどう反応していいか分からず、ひたすら突っ立っている。そのルカに、ミクはいつもの事だと言って笑った。それにつられてメイコが笑い、見守っていた博士も一緒になって笑い声を上げる。ますますルカは反応に迷う事となった。
そんな中、リンとレンの後からカイトがのんびりと歩いてきた。博士が気がついて手招きをする。
「お、カイト。ちょいちょい」
カイトはルカに対し、軽く会釈をすると、少し向こうに移動し始めた博士についていった。
「……あのアンドロイドは誰ですか?」
ルカがカイトを指さして尋ねると、ミクが答える。
「カイトさんよ」
ミクが言った言葉に、ルカは首を傾げた。
「ボーカロイドなのですか?」
「うん。どうして?」
「……先輩方のお仕事はほぼ全て拝見させて頂いております。その中にいらっしゃいませんでしたので、違うのかと思いました」
一言に、ミクはサッと顔色を変えた。微妙な話題だ。
「あ、カイトさん、歌う仕事はしてないの」
ミクが慌てた声で、冷汗を垂らしながら言う。そんなミクの微妙な変化にルカは気付かなかった。
「歌う仕事をしていないのであれば、ボーカロイドではないのではないでしょうか」
「へ?」
思わずミクは素っ頓狂な声を上げる。
「で、でも、ボーカロイドとして作られたのなら、ボーカロイドじゃないかなあって思うんだ、私は」
顔が引きつっているミクに、ルカは仮面を被っているような変わらない表情で問いかけた。
「音の出ないラジオはただのガラクタだとわたくしは教えられました。違うのですか?」
ミクは、なんて事を言うのだと思った。
次:初音ミクのある日の日記その2
その雰囲気に呑まれながら、ミクははじめましてと言って手を差し出した。桃色の髪のボーカロイド、巡音ルカは素直にミクの手を握って言う。
「形式V03-01MR、巡音ルカです、ミク先輩」
「こんにちは。形式V01-01HM、初音ミクです」
ルカはミクより少し低い声で、表情を動かさず挨拶した。
その無表情さに、まだ慣れてないのかなとミクは思った。
いずれ慣れれば笑ってくれたりもするだろうから、急ぐことはないと考え、にこやかに笑ってよろしくねと言った。
「形式V00-01MY、メイコよ。ボーカロイドとしては長いほうだから、質問があったら聞いて」
ミクの一歩後ろにいたメイコがルカに言う。
メイコは起動してから四年と少しだが、今活動しているボーカロイドの中では長いほうだ。
「メイコ先輩はボーカロイドの草分け的存在だと伺っています。いくらか歌や映像も見ております」
「あら、うれしい」
「はい。よろしくお願い致しします」
無表情で、しかし少し早口気味に話すのを見て、ミクはルカがメイコに憧れているのだろうと思った。
なんだかメイコがうらやましい気がしたが、同時に当たり前だとも思った。メイコがボーカロイドの草分け的存在なのは本当だし、ミク自身尊敬している。
ふと玄関の方が騒がしい。だんだん音が近づいてきて、騒がしい原因がわかった。リンとレンだ。リンはいつもの如く寝坊、レンはリンを起こしに行っていた。
「わ、もう来てる。レン遅ーい!……あ、はじめまして、形式V02-01KL鏡音リンです」
「リン待てよ!……あ、どうも。形式V02-02KR、レンです」
「よろしくお願い致します。先輩」
「えへへ、どうも」
「こら、リン遅い。レンも、リンが起きそうになかったらとりあえず来なさいって言ったでしょう」
「メイコ姉、ごめんなさい」
「ごめんなさい」
リンとレンはメイコに怒られて、しゅんとしてしまった。そんな様子にルカはどう反応していいか分からず、ひたすら突っ立っている。そのルカに、ミクはいつもの事だと言って笑った。それにつられてメイコが笑い、見守っていた博士も一緒になって笑い声を上げる。ますますルカは反応に迷う事となった。
そんな中、リンとレンの後からカイトがのんびりと歩いてきた。博士が気がついて手招きをする。
「お、カイト。ちょいちょい」
カイトはルカに対し、軽く会釈をすると、少し向こうに移動し始めた博士についていった。
「……あのアンドロイドは誰ですか?」
ルカがカイトを指さして尋ねると、ミクが答える。
「カイトさんよ」
ミクが言った言葉に、ルカは首を傾げた。
「ボーカロイドなのですか?」
「うん。どうして?」
「……先輩方のお仕事はほぼ全て拝見させて頂いております。その中にいらっしゃいませんでしたので、違うのかと思いました」
一言に、ミクはサッと顔色を変えた。微妙な話題だ。
「あ、カイトさん、歌う仕事はしてないの」
ミクが慌てた声で、冷汗を垂らしながら言う。そんなミクの微妙な変化にルカは気付かなかった。
「歌う仕事をしていないのであれば、ボーカロイドではないのではないでしょうか」
「へ?」
思わずミクは素っ頓狂な声を上げる。
「で、でも、ボーカロイドとして作られたのなら、ボーカロイドじゃないかなあって思うんだ、私は」
顔が引きつっているミクに、ルカは仮面を被っているような変わらない表情で問いかけた。
「音の出ないラジオはただのガラクタだとわたくしは教えられました。違うのですか?」
ミクは、なんて事を言うのだと思った。
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