『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』文章保管用ブログ。
Posted by ささら - 2008.03.01,Sat
メイコとカイトの短編。
4月初旬から中旬にかけてくらいの時期。
4月初旬から中旬にかけてくらいの時期。
「で、この状況は?」
メイコが仕事から戻ってくると研究所のリビングは散々な有様だった。
誰が持ち込んだか知らないが、いや元々研究所にはあるのだが滅多にミクたちの前には出さない酒瓶が、床に転がっている。
その横でミクとリンはケタケタ笑いながら酔いつぶれた博士をぺちぺちネギで叩いているし、レンはくまの人形相手にリンのグチを言っているし、他の所員は寝たんだが放置なんだかで出来上がった飲み会のようだ。
「どうしろっていうの」
頭を抱えててつぶやくと、後ろからおかえりーと声がした。
「お仕事お疲れ様です。ご飯食べる?残りなら用意できるけど」
そういいながら現れたカイトはいつもどおりカップアイスを食べていたが、珍しく青いマフラー取っていた。
「マフラーは冷却補助器具なんでしょ、なくていいの?」
本当はなきゃダメなんだけど……と言いながらカイトはレンの愚痴相手になっている人形を指差した。
どうやらマフラーは人形のものになったらしい。
「大変ね……リンかミクに取られちゃった?」
「それでベティのほうが似合うってさ」
心なしか少し困ったような顔をしているくまのベティを見ながらメイコはため息をついた。
「お酒を持ち込んだのは博士?」
「うん、博士がミクのCDヒット祝いに贈られてきたお酒を開けちゃって」
「開けたお酒に興味津々のミクとリンに飲ませちゃって、ついでにレンが巻き込まれちゃったわけね」
そういうこと、と言うと同時に食べていたアイスが空になる。
「カイトは飲まなかったの?」
「アイスのほうが美味しい」
「あら、お酒は美味しいわよ」
「僕には感情を昂ぶらせるものはあまり良くないみたいだ。すぐ気持ち悪くなる」
「セーフティね」
「それだけじゃなくて元々あんまり強くないみたいだけどね」
「成人しててお酒が飲めないのは損してると思うわ」
「そうかな……ああ、寝ちゃったね」
気がつくとミクもリンもレンも寝息を立てていた。とりあえず二人で手分けして夢の世界に行った子供たちをベットに連れて行く。メイコは女性型のアンドロイドの中でもかなりの力持ちだし、カイトは思考能力はともかくとして身体的には男性型アンドロイドの平均的な力を持っていたので、運ぶのは難なく終わった。寝入っている博士はソファに上げて毛布をかけてやることにする。正直大人の面倒は見切れない。
あとは部屋の片付けだ。二人で手分けしながらゴミを片付け食器を洗う。カイトに任せられないような皿洗いはメイコの仕事だ。たびたびこけかけるカイトはいつものことなので無視して、皿の山を減らしていき酒瓶を水洗いして終了。
「めーちゃん」
メイコは呼びかけられたことに一瞬気がつかなかった。気がついてあわててカイトの方を向く。
(そういえば昨日そう呼ぶとかなんとか話したわね)
「なんかその呼び方むずむずするわね。なに?」
カイトを見て、マフラーをつけていないことに気づき、あっとメイコは声をあげた。そういえばアイスを食べ終わってからかなりたっている。こんなことに気がつかないなんて。
「僕はそろそろ寝ないとまずそうだ。アイスももうないし」
そういうカイトは見るからにつらそうな表情をしていた。体調を伝えるためにアンドロイドも顔色の変化というものがあるが、彼は明らかに血の気が引いた色をしている。
メイコはあわててマフラーをベティから取るとカイトに手渡しした。マフラーを受け取る手が震えている。
「マフラー大事なんでしょう!最初につけておきなさい、まったく」
「でも片付けの時邪魔だし、めーちゃん忙しそうだったから僕もサボるわけにもいかないし」
「機能停止の危機のほうが優先されるに決まってるでしょ、このバカ」
「めーちゃんひどいなぁ」
あははと笑いながらマフラーを巻きなおしたカイトは、青い顔で部屋に戻るよと言ってリビングを出て行った。
アンドロイドは原則人間を優先する、とはいえ高い優先順位に「自己保持」の項目もある。カイトは自己保持の項目の順位が低いのかもしれない。この先気をつけて見ていかなければ。
そう考えたメイコは、休む暇がないわねとため息をついた。
次:レンとネコ
メイコが仕事から戻ってくると研究所のリビングは散々な有様だった。
誰が持ち込んだか知らないが、いや元々研究所にはあるのだが滅多にミクたちの前には出さない酒瓶が、床に転がっている。
その横でミクとリンはケタケタ笑いながら酔いつぶれた博士をぺちぺちネギで叩いているし、レンはくまの人形相手にリンのグチを言っているし、他の所員は寝たんだが放置なんだかで出来上がった飲み会のようだ。
「どうしろっていうの」
頭を抱えててつぶやくと、後ろからおかえりーと声がした。
「お仕事お疲れ様です。ご飯食べる?残りなら用意できるけど」
そういいながら現れたカイトはいつもどおりカップアイスを食べていたが、珍しく青いマフラー取っていた。
「マフラーは冷却補助器具なんでしょ、なくていいの?」
本当はなきゃダメなんだけど……と言いながらカイトはレンの愚痴相手になっている人形を指差した。
どうやらマフラーは人形のものになったらしい。
「大変ね……リンかミクに取られちゃった?」
「それでベティのほうが似合うってさ」
心なしか少し困ったような顔をしているくまのベティを見ながらメイコはため息をついた。
「お酒を持ち込んだのは博士?」
「うん、博士がミクのCDヒット祝いに贈られてきたお酒を開けちゃって」
「開けたお酒に興味津々のミクとリンに飲ませちゃって、ついでにレンが巻き込まれちゃったわけね」
そういうこと、と言うと同時に食べていたアイスが空になる。
「カイトは飲まなかったの?」
「アイスのほうが美味しい」
「あら、お酒は美味しいわよ」
「僕には感情を昂ぶらせるものはあまり良くないみたいだ。すぐ気持ち悪くなる」
「セーフティね」
「それだけじゃなくて元々あんまり強くないみたいだけどね」
「成人しててお酒が飲めないのは損してると思うわ」
「そうかな……ああ、寝ちゃったね」
気がつくとミクもリンもレンも寝息を立てていた。とりあえず二人で手分けして夢の世界に行った子供たちをベットに連れて行く。メイコは女性型のアンドロイドの中でもかなりの力持ちだし、カイトは思考能力はともかくとして身体的には男性型アンドロイドの平均的な力を持っていたので、運ぶのは難なく終わった。寝入っている博士はソファに上げて毛布をかけてやることにする。正直大人の面倒は見切れない。
あとは部屋の片付けだ。二人で手分けしながらゴミを片付け食器を洗う。カイトに任せられないような皿洗いはメイコの仕事だ。たびたびこけかけるカイトはいつものことなので無視して、皿の山を減らしていき酒瓶を水洗いして終了。
「めーちゃん」
メイコは呼びかけられたことに一瞬気がつかなかった。気がついてあわててカイトの方を向く。
(そういえば昨日そう呼ぶとかなんとか話したわね)
「なんかその呼び方むずむずするわね。なに?」
カイトを見て、マフラーをつけていないことに気づき、あっとメイコは声をあげた。そういえばアイスを食べ終わってからかなりたっている。こんなことに気がつかないなんて。
「僕はそろそろ寝ないとまずそうだ。アイスももうないし」
そういうカイトは見るからにつらそうな表情をしていた。体調を伝えるためにアンドロイドも顔色の変化というものがあるが、彼は明らかに血の気が引いた色をしている。
メイコはあわててマフラーをベティから取るとカイトに手渡しした。マフラーを受け取る手が震えている。
「マフラー大事なんでしょう!最初につけておきなさい、まったく」
「でも片付けの時邪魔だし、めーちゃん忙しそうだったから僕もサボるわけにもいかないし」
「機能停止の危機のほうが優先されるに決まってるでしょ、このバカ」
「めーちゃんひどいなぁ」
あははと笑いながらマフラーを巻きなおしたカイトは、青い顔で部屋に戻るよと言ってリビングを出て行った。
アンドロイドは原則人間を優先する、とはいえ高い優先順位に「自己保持」の項目もある。カイトは自己保持の項目の順位が低いのかもしれない。この先気をつけて見ていかなければ。
そう考えたメイコは、休む暇がないわねとため息をついた。
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