『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』文章保管用ブログ。
Posted by ささら - 2008.06.12,Thu
晴れてたならピクニック。
博士は携帯電話のようなものを取り出すとそれを操作しているようだ。
「なあにそれ」
「ん?ああ、辺りのアンドロイドの反応を見るレーダーだ。ただ結構近くじゃないとわからないんだよ」
「それで二人の居場所が」
「さて、とりあえず起動させよう」
雨はあれからすぐに小雨になった。
メイ姉とミク姉、それにわたしは一度博士たちの元に戻った。別荘に着いたときにはもう雨は上がっていた。
博士たちに事情を説明すると、山田博士はレンとカイトにぃを探しに行き、田中博士は残って怪我していたときのための準備をするらしい。
わたしたちは残れって博士に言われたけど、みんなで行きたいと言って、ちょっとした口論に。
最終的になぜかわたしだけ同行が許可されて、いまここにいる。
博士は携帯レーダーの画面を見ながらアンテナをそっちにこっちに向けている。
「……博士、なんでわたしはついてきていいって言ったの?」
「うーん、まぁアレだよね、正直レーダーだけじゃ頼りなかったからね」
どういうことだろう。
「共鳴反応を狙ってみようかと思ってさ。リンはレンと基幹が一緒だし、カイトとは精神回路の系列が一緒だからねぇ」
「きょうめいはんのう」
「なんとなーく、似たような部分のあるアンドロイドに対して、シンパシーってやつ、リンもたまに感じないかい?共鳴反応と言うんだ。ま、研究者の間でも眉唾とかオカルトとかよく言われてるけど、僕は結構あると思ってるんだよねぇ」
「なんかそんな感じすることあるけど……でも居場所まではわからないよ」
「居場所とかはいいんだよ。それはレーダーの仕事。リンともしかしたら引き合うかもしれないってだけ」
そういってわたしの頭をなでる。
……お父さんみたい。
たしか博士って40歳前くらいだって言っていたし、わたしたちくらいの年齢の子供がいてもおかしくないんだ。山田博士って家族の話聞かないけどいるのかな。
ピコンとレーダーから機械音がする。画面を見るとよくわからない数字が一杯書いてある。
「む、おおまかな方角はわかるけどそれ以上は無理か。どうしようか~」
「そっち行ってみようよ!」
そうだねと博士が言って、わたしたちはレーダーが示す方へ歩き出した。
ちょっと歩いても見つからない。そもそも、ここはわたしたちが別荘に帰るときに一度通っているから、その時見つかってもいいはずだ。
……あれ?
いま、なんか聞こえた……。この下っぽい?
あ、もしかしてこれが共鳴反応ってやつかも。
「博士!あの」
「どうした?」
「この下の方にいる、気がする……」
「なんとなく?」
やっぱりなんとなくじゃ信じてもらえないのかな……そう思いながらうなづく。
すると博士は、すぐに下りてみようと言って、背負っていたリュックからロープを取り出した。
「博士はなんとなくなのに信じるの?」
わたしは思わず聞いた。
「リンのなんとなくは、僕のなんとなくよりや、ミクやメイコのなんとなくよりも、格段に可能性が高いからねぇ」
そう言って木にロープをくくりつけた。
ロープを伝って下のほうにおりる。べしゃっとぬかるんだ土を踏んだ音が響いた。
博士とわたしは手がかりを見逃さないように見回す。
「レン、カイトにぃ!」
大きな声で叫ぶ。エコーのエフェクトがかかったように反響する中、かすかに、わたしを呼ぶ声が聞こえた。
レンだ。
「博士!」
「こっちみたいだね、急ごう」
そうして声のするほうに行くと、本当にレンとカイトにぃがいた。
土の壁を背に、木を傘にしている。
レンは片足を伸ばし、もう片足を立てて座って、あたりを見回している。カイトにぃは横向きに倒れている……どうして?
「レン!レン!」
こちらに気づいたレンは叫ぶ。
「……リン、博士!」
「レン、もう心配ばっかりかけて!それにカイトにぃ、一体どうしたの?」
「よかった、カイト運ぶの手伝ってくれ。突然倒れ込んだんだ。たぶん熱暴走かなにかだと思うんだけど」
「お、カイトはまたなにかやらかしたねぇ。レンは無事かい」
「……あの、実はそこから落ちて怪我して……。動けないんです」
「バカレン!どうせまたカイトにぃ巻き添えにしたんでしょ!」
わたしの言葉にレンは反論しようとして、そしてうろたえた。
「な、ちが……いや確かにそ……でもカイトにも原因が」
「言い訳しないの!」
「ごめん」
「謝る相手が違う!」
「……わかったよ、後で謝っとく」
「うんうん、それでよし」
わたしたちをよそにカイトにぃを診ていた博士は、大体診終わったのか、掛け声付きでカイトにぃを背負う。
「熱暴走というか、冷却が満足にできてないだけだね~。今のままだと心配だからさっさと戻ろう」
わたしはレンに肩を貸すため、手を差し出した。
「ほら」
「……ありがと」
別荘の方向はわかってるから、足を踏み外さないように慎重にそちらへ向かう。
「ところでレン、もしかしてカイトはなにか余計な事をした?」
「余計というか……カイトのやつ、こっちの感覚遮断なんかして……博士そんなことやれって言いましたか?」
「コード繋いで感覚遮断したの?いやそんなこと言うわけないよー。はあ、熱暴走の主原因はそれだなぁ。戻ったらまずカイトの神経系のメンテだな」
「そもそもレンが落ちなきゃカイトにぃがそんなことする必要もなかったのに」
「うるせーな」
レンはそう言った後、小声で、反省してると、恥ずかしそうに言っていた。
わたしたちが別荘に戻ると、カイトにぃとレンの姿を見てみんな慌てふためいた様子で、特にミク姉なんて泣き出してしまって大変だった。
田中博士がカイトにぃを代わりに背負うと、山田博士がレンを連れて行く。
「地下にメンテナンス室があるのよ」
メイ姉がわたしのところに来て言った。安堵の表情を浮かべている。
「ミク姉、大丈夫?」
「だ、いじょうぶ。みっともないところ見せちゃった」
ミクは涙を拭いながら、笑顔を浮かべた。
「今は博士たちに任せましょう。メンテナンス室見たけどかなりの設備だったわ。とりあえずは大丈夫よ」
「うん……あ、なんでメンテ室があるの?」
「田中博士に聞いた話だと、元の持ち主は開発部の人で、趣味で持っていたんだろうという事らしいわ」
「へぇ……」
趣味でメンテナンス用の設備持つなんて、やっぱりすごいお金持ちだったんだろうな。
「博士たちはその人の遺品のデータディスクを探してたみたいね。見つかったみたいだけど」
「そう言ってたね。これで楽になるとかなんとか」
「ふうん……なんなんだろう……」
三人、そう言いながら地下へ続く階段を見ている。
この前と同じ、誰かが怪我をしてメンテナンス室にいる状態。
だけど、この前より安心感があった。
たぶん一度カイトにぃが戻ってきてくれたのと、田中博士が信用できる人だってわかったからだと思う。
雨の音はもう止んでいた。すばやく移ろう空は晴れて、窓の外には、まだ上方にある太陽が見えた。
次:できない事はできない
「なあにそれ」
「ん?ああ、辺りのアンドロイドの反応を見るレーダーだ。ただ結構近くじゃないとわからないんだよ」
「それで二人の居場所が」
「さて、とりあえず起動させよう」
雨はあれからすぐに小雨になった。
メイ姉とミク姉、それにわたしは一度博士たちの元に戻った。別荘に着いたときにはもう雨は上がっていた。
博士たちに事情を説明すると、山田博士はレンとカイトにぃを探しに行き、田中博士は残って怪我していたときのための準備をするらしい。
わたしたちは残れって博士に言われたけど、みんなで行きたいと言って、ちょっとした口論に。
最終的になぜかわたしだけ同行が許可されて、いまここにいる。
博士は携帯レーダーの画面を見ながらアンテナをそっちにこっちに向けている。
「……博士、なんでわたしはついてきていいって言ったの?」
「うーん、まぁアレだよね、正直レーダーだけじゃ頼りなかったからね」
どういうことだろう。
「共鳴反応を狙ってみようかと思ってさ。リンはレンと基幹が一緒だし、カイトとは精神回路の系列が一緒だからねぇ」
「きょうめいはんのう」
「なんとなーく、似たような部分のあるアンドロイドに対して、シンパシーってやつ、リンもたまに感じないかい?共鳴反応と言うんだ。ま、研究者の間でも眉唾とかオカルトとかよく言われてるけど、僕は結構あると思ってるんだよねぇ」
「なんかそんな感じすることあるけど……でも居場所まではわからないよ」
「居場所とかはいいんだよ。それはレーダーの仕事。リンともしかしたら引き合うかもしれないってだけ」
そういってわたしの頭をなでる。
……お父さんみたい。
たしか博士って40歳前くらいだって言っていたし、わたしたちくらいの年齢の子供がいてもおかしくないんだ。山田博士って家族の話聞かないけどいるのかな。
ピコンとレーダーから機械音がする。画面を見るとよくわからない数字が一杯書いてある。
「む、おおまかな方角はわかるけどそれ以上は無理か。どうしようか~」
「そっち行ってみようよ!」
そうだねと博士が言って、わたしたちはレーダーが示す方へ歩き出した。
ちょっと歩いても見つからない。そもそも、ここはわたしたちが別荘に帰るときに一度通っているから、その時見つかってもいいはずだ。
……あれ?
いま、なんか聞こえた……。この下っぽい?
あ、もしかしてこれが共鳴反応ってやつかも。
「博士!あの」
「どうした?」
「この下の方にいる、気がする……」
「なんとなく?」
やっぱりなんとなくじゃ信じてもらえないのかな……そう思いながらうなづく。
すると博士は、すぐに下りてみようと言って、背負っていたリュックからロープを取り出した。
「博士はなんとなくなのに信じるの?」
わたしは思わず聞いた。
「リンのなんとなくは、僕のなんとなくよりや、ミクやメイコのなんとなくよりも、格段に可能性が高いからねぇ」
そう言って木にロープをくくりつけた。
ロープを伝って下のほうにおりる。べしゃっとぬかるんだ土を踏んだ音が響いた。
博士とわたしは手がかりを見逃さないように見回す。
「レン、カイトにぃ!」
大きな声で叫ぶ。エコーのエフェクトがかかったように反響する中、かすかに、わたしを呼ぶ声が聞こえた。
レンだ。
「博士!」
「こっちみたいだね、急ごう」
そうして声のするほうに行くと、本当にレンとカイトにぃがいた。
土の壁を背に、木を傘にしている。
レンは片足を伸ばし、もう片足を立てて座って、あたりを見回している。カイトにぃは横向きに倒れている……どうして?
「レン!レン!」
こちらに気づいたレンは叫ぶ。
「……リン、博士!」
「レン、もう心配ばっかりかけて!それにカイトにぃ、一体どうしたの?」
「よかった、カイト運ぶの手伝ってくれ。突然倒れ込んだんだ。たぶん熱暴走かなにかだと思うんだけど」
「お、カイトはまたなにかやらかしたねぇ。レンは無事かい」
「……あの、実はそこから落ちて怪我して……。動けないんです」
「バカレン!どうせまたカイトにぃ巻き添えにしたんでしょ!」
わたしの言葉にレンは反論しようとして、そしてうろたえた。
「な、ちが……いや確かにそ……でもカイトにも原因が」
「言い訳しないの!」
「ごめん」
「謝る相手が違う!」
「……わかったよ、後で謝っとく」
「うんうん、それでよし」
わたしたちをよそにカイトにぃを診ていた博士は、大体診終わったのか、掛け声付きでカイトにぃを背負う。
「熱暴走というか、冷却が満足にできてないだけだね~。今のままだと心配だからさっさと戻ろう」
わたしはレンに肩を貸すため、手を差し出した。
「ほら」
「……ありがと」
別荘の方向はわかってるから、足を踏み外さないように慎重にそちらへ向かう。
「ところでレン、もしかしてカイトはなにか余計な事をした?」
「余計というか……カイトのやつ、こっちの感覚遮断なんかして……博士そんなことやれって言いましたか?」
「コード繋いで感覚遮断したの?いやそんなこと言うわけないよー。はあ、熱暴走の主原因はそれだなぁ。戻ったらまずカイトの神経系のメンテだな」
「そもそもレンが落ちなきゃカイトにぃがそんなことする必要もなかったのに」
「うるせーな」
レンはそう言った後、小声で、反省してると、恥ずかしそうに言っていた。
わたしたちが別荘に戻ると、カイトにぃとレンの姿を見てみんな慌てふためいた様子で、特にミク姉なんて泣き出してしまって大変だった。
田中博士がカイトにぃを代わりに背負うと、山田博士がレンを連れて行く。
「地下にメンテナンス室があるのよ」
メイ姉がわたしのところに来て言った。安堵の表情を浮かべている。
「ミク姉、大丈夫?」
「だ、いじょうぶ。みっともないところ見せちゃった」
ミクは涙を拭いながら、笑顔を浮かべた。
「今は博士たちに任せましょう。メンテナンス室見たけどかなりの設備だったわ。とりあえずは大丈夫よ」
「うん……あ、なんでメンテ室があるの?」
「田中博士に聞いた話だと、元の持ち主は開発部の人で、趣味で持っていたんだろうという事らしいわ」
「へぇ……」
趣味でメンテナンス用の設備持つなんて、やっぱりすごいお金持ちだったんだろうな。
「博士たちはその人の遺品のデータディスクを探してたみたいね。見つかったみたいだけど」
「そう言ってたね。これで楽になるとかなんとか」
「ふうん……なんなんだろう……」
三人、そう言いながら地下へ続く階段を見ている。
この前と同じ、誰かが怪我をしてメンテナンス室にいる状態。
だけど、この前より安心感があった。
たぶん一度カイトにぃが戻ってきてくれたのと、田中博士が信用できる人だってわかったからだと思う。
雨の音はもう止んでいた。すばやく移ろう空は晴れて、窓の外には、まだ上方にある太陽が見えた。
次:できない事はできない
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