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『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』文章保管用ブログ。
Posted by - 2024.11.22,Fri
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Posted by ささら - 2008.04.15,Tue

レンとネコの裏話。


 みんなが寝静まっただろうという午前2時、カイトがリンとレンの部屋の前に行った時には既に先客が来ていた。
「あれ、博士、こんばんは」
 博士は、こんばんわ~と眠たそうな顔をしながら返す。
「データ取りに影響が出るかも知れないのに、こんな時間まで起きてるのは感心せんなぁ」
「すいません、今日だけはどうしても。……博士の目当てもあのネコですか?」
「そうそう。そういうカイトもか。カイトはあのネコがどこから来たのかわかってたのかい」
「ええ実は。博士も知っていたんですね」
「まぁ新井くんとはそれなりに付き合い長いからねぇ。カイトは……そうか、料理中に仲良くなったのか」
「新井さん自分のウチのネコについてよく話すんですよ。あの仕草がかわいいとかこの行動がかわいいとか」
「彼女はあまり私生活のこと話さないけど、ネコにはベッタベタだから。生き物を飼うと大抵の人間は飼い主バカになるもんだが、彼女も例に漏れずってわけだね」
 はぁ、とカイトは間が抜けた返事をして、就寝して全く静かになっている部屋の扉を見た。
「ネコを勝手に研究所に放したとなると、新井さん怒られちゃったり、解雇されちゃったりしちゃいますよね。夜のうちに戻せば、野良猫が入ってきたって会社に言い訳出来ていいと思ったんですけど」
(うわー、やっぱりカイトは思考力がないとか嘘だよ、ほぼ同じこと考えてたよー。開発の嘘つきぃ、あいつら秘密主義すぎだよ、これで実験とかどうしろっていうのさ)
 開発めと小声でつぶやいて、博士も確かタマだっかかミケだったかが寝ているであろう部屋の扉を見る。博士のおぼえていた名前はどちらも間違えでネコはポチという名前だが、あいにくとここにいる二人は名前を重視しないタイプであった。
「それがいいだろうねぇ、今のうちに返して、野良猫が入ってきましたって報告、ついでにボーカロイドにいい影響が出そうなので動物飼わせてくださいとかお願いすれば、まぁ上手いとこ新井くんのとこの子だって追求されないで済むんじゃないかと思うよ」
「僕としては新井さんが居ないと困るので、解雇を阻止できればそれで」
「……ネコ放したくらいで解雇はないと思うんだけど……。まあいいや、とにかくネコを捕まえて返すって作戦で行こう」
「はい、でもどうしましょうか。僕はネコに好かれてないみたいなので、近づくと逃げるかもしれません」
「あーそれで今日一日あんまりネコに近づかなかったのね。こっちも人このこと言えないけどねぇ。たぶん嫌われてはいないだろうけど、好かれてもいないっぽい感じ?」
「いくら飼い猫でも寝てるときに近づいたら目を覚ますだろうし、暴れられてリンとレンが起きる事態は避けたいですね。二人にネコがどこから来たのか知られると、次開発に行ったときになし崩しにバレる可能性が高いですから」
「うんうん、やっぱ開発は嘘つきだよねー。新井くんがいれば近づいてきてくれたりしないかな」
「やってみる価値ありそうですね。その場でネコも返せるし、いいと思います。でも新井さん風邪治ったんですか?」
「さっきまでメッセンジャーにいたんで聞いたら、熱は引いたから明日来るって。今から車で迎えに行って、こっそり返して送ってく、これでいこうか。車出してくるから、帰ってくるまでの間、カイトは」
「僕はみんなが起きないようにここで見てますね」
「そうそう、お願いねー。開発の嘘つきー」
「またなぜ開発?」
「カイトとお話してると開発の秘密主義っぷりをそれはもう感じるからだよ」
 呆れた顔をした博士に、カイトは笑顔を返した。
「開発が秘密主義なのはいつものことですし、頻繁に技術情報漏洩されるよりはましかと。納得いかないかもしれませんけど、その辺は新部品にキツイ注文つけてみるとかしてみると精神衛生上いいんじゃないか……と、僕の開発担当だった人が言ってましたよ」
「うーん、あの博士も君も、なかなか言うね」
 かくして、真夜中に二人と原因の一人は、泥棒のようにこそこそとネコ捕獲作戦を決行。
 飼い主と素直に飼い主に寄ってきたネコは、一応飼い主の上司である博士に「風邪でフラフラしてもネコが荷物にまぎれてるのくらい気がつくこと!そもそもネコは勝手に荷物に紛れ込まないこと!」と説教を受けてから、家に送られていった。
 送って研究所に戻ってきた頃には朝の4時、いっそ徹夜しようかと魔が差した博士に、カイトはちゃんと寝てくださいねとアイスを食べながら言った。
 博士は緊急冷却が必要になるくらい無理してるんだったらお前こそ寝ろと思ったが、自己保存に関して最低限しか頓着しないというあの分厚い説明書の一文を思い出した。
「開発も一応本当のこと言うんだねぇ」
「開発は大抵本当のことしか言いませんよ」
 カイトはそう言い、続きの、ただ秘密にしてる部分が多いだけで、という部分は飲み込むことにした。それは言わなくてもいいことだ。
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