『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』文章保管用ブログ。
Posted by ささら - 2008.07.18,Fri
日常その7の二日後、内容的には裏話的な何か。
白い部屋。喧騒も聞こえない。
アンドロイドは大量のコードに繋がれながら椅子に腰掛けている。
白衣の男はその横のモニターを見ている。
「意外ともってるね」
「博士たちのおかげです」
「そうでもないよ。正直六月中に壊れるかなと思ったんだ。この分だとまあ、八月までなんとかもつね」
「もしかしたら少しだけ頑丈に作ってあるのかもしれません」
「その辺は設計担当に聞かないとなぁ。もういないけど。……はい、終わった」
「ありがとうございます」
「もう少しそのままでいるといいよ」
「はい。……そろそろミクの歌が始まる頃ですね」
「そうだね。今回は中継あるみたいだけど、見る?」
「いえ、やめておきます。嫌なこと考えそうですから」
「嫉妬しそう?」
「端的に、言えば」
「嫉妬も感情だ。否定してはいけない」
「たぶん、ただひたすら心の内に入れておくのは難しいものです。いつか爆発する」
「経験?」
「そ……いいえ、違います。そんなんじゃないんです。推察、そんな感じのものです」
「自らの感情やフィーリングを否定したっていいことないよ。恨みも妬みも憎しみも、辛さも苦しさも、全部、君のものだ」
「ええ、わかっています、わかっているんです。……わかっていたはずなんです」
「そうか。……わかっているなら、いいよ。……そうだ、例のプログラムのことだけど」
「はい」
「八月に間に合う、かも、しれない。後はカイト次第だ」
「……この前、ミクに服を送ってもらったんです。めーちゃんにはものすごく世話になってて、レンには心配ばっかりかけて、リンを何度も泣かせちゃって」
「うん」
「返せるものをずっと考えてきました。金銭なんかを持っているわけでもないし、何か物品を渡せるわけでもない。何か助けになれればそれでいいって思ってずっとやってきて。でもそれでレンに怒られちゃいました」
「レンらしいな」
「ええ。……渡せるものはもうない。けど、何か渡したいんです。だから、八月までは、意地でももたせます。喜ばれるかどうかはわかりませんが」
「喜ぶよ、あの子達は」
「そう言っていただけると助かります」
「慰めてるわけじゃない。みんなから逃げないで、もう少しだけ信じてあげなさい」
「……はい」
「やっぱりライブの中継見ようか」
「僕は」
「一緒に見よう。向こうで見てるみんなと一緒にね」
「……ありがとうございます」
「じゃあテレビ持ってくるよ。10分くらいで戻ってくるから」
白衣の男が出て行く。
アンドロイドは謝罪と感謝の言葉を紡ぐ。
その頬に、失ったはずの涙が一筋流れた。
アンドロイドは大量のコードに繋がれながら椅子に腰掛けている。
白衣の男はその横のモニターを見ている。
「意外ともってるね」
「博士たちのおかげです」
「そうでもないよ。正直六月中に壊れるかなと思ったんだ。この分だとまあ、八月までなんとかもつね」
「もしかしたら少しだけ頑丈に作ってあるのかもしれません」
「その辺は設計担当に聞かないとなぁ。もういないけど。……はい、終わった」
「ありがとうございます」
「もう少しそのままでいるといいよ」
「はい。……そろそろミクの歌が始まる頃ですね」
「そうだね。今回は中継あるみたいだけど、見る?」
「いえ、やめておきます。嫌なこと考えそうですから」
「嫉妬しそう?」
「端的に、言えば」
「嫉妬も感情だ。否定してはいけない」
「たぶん、ただひたすら心の内に入れておくのは難しいものです。いつか爆発する」
「経験?」
「そ……いいえ、違います。そんなんじゃないんです。推察、そんな感じのものです」
「自らの感情やフィーリングを否定したっていいことないよ。恨みも妬みも憎しみも、辛さも苦しさも、全部、君のものだ」
「ええ、わかっています、わかっているんです。……わかっていたはずなんです」
「そうか。……わかっているなら、いいよ。……そうだ、例のプログラムのことだけど」
「はい」
「八月に間に合う、かも、しれない。後はカイト次第だ」
「……この前、ミクに服を送ってもらったんです。めーちゃんにはものすごく世話になってて、レンには心配ばっかりかけて、リンを何度も泣かせちゃって」
「うん」
「返せるものをずっと考えてきました。金銭なんかを持っているわけでもないし、何か物品を渡せるわけでもない。何か助けになれればそれでいいって思ってずっとやってきて。でもそれでレンに怒られちゃいました」
「レンらしいな」
「ええ。……渡せるものはもうない。けど、何か渡したいんです。だから、八月までは、意地でももたせます。喜ばれるかどうかはわかりませんが」
「喜ぶよ、あの子達は」
「そう言っていただけると助かります」
「慰めてるわけじゃない。みんなから逃げないで、もう少しだけ信じてあげなさい」
「……はい」
「やっぱりライブの中継見ようか」
「僕は」
「一緒に見よう。向こうで見てるみんなと一緒にね」
「……ありがとうございます」
「じゃあテレビ持ってくるよ。10分くらいで戻ってくるから」
白衣の男が出て行く。
アンドロイドは謝罪と感謝の言葉を紡ぐ。
その頬に、失ったはずの涙が一筋流れた。
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