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『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』文章保管用ブログ。
Posted by - 2024.11.22,Fri
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Posted by ささら - 2008.09.28,Sun

五つの歌声」の裏話的な何か。
bさんのグダグダ思考垂れ流し。
 


 気が抜けたんだろう。
 朝、ミクたちを見送った直後に倒れたまま動けなくなってしまった。
 無理をするものじゃないなと思って、そもそもここまで永らえた事自体が無理だったなと思い直した。
 完全に動けない、というのも何回目だろうか。何回なっても慣れないなと思う。
 でも、前ほどの苦しみはない。それには慣れたから。
 倒れた事に気がついた博士が、首後ろの端子にコードを繋いで何かやっているようだ。
 すみませんと声を出そうとすると、発声を司る部分が引きつるように鈍く動き、それでも声は出なかった。
 周りの状況はわかるのだけど、こちらから何か伝える事ができない。
 それが、少し寂しい気がする。
 それにしても、いよいよ止まる時が来たのだ。
 流石にこれ以上はどうしようもない。
 博士は手を尽くしてくれたし、研究所の人はみんな優しかった。
 それと、めーちゃんやミク、リンやレン、会えるとは思っていなかった兄弟たちに、会えて本当に良かったと思う。
 いや、みんなの晴れ舞台を見にいけなかったのが、少し未練だ。

 博士の声が聞こえる。
 けれど反応はできない、もう動かない。
「元々、君がこの研究所に来たのは、メイコたちへの影響を計るためで、君自体に対しての配慮はなし、壊れたら終わりだった。知っているとは思うが」
 ええ、知っています。途中で変更になったことも。
 他のボーカロイドへの影響が良好だった事で、計画が修正されたんだ。
「……もしかしたら、何とかなるかもしれないんだ」
 笑う顔が目に浮かぶ呼吸音がした。
「対策を練っているし、上から対処しろとも言われている。君がどう思おうとも、対処法が見つかれば容赦なく実行する。君が嫌がっても、もう一度起き上がってもらうかもしれない」
 そう言って、博士はため息をついたようだ。
 ようだというのは、どうも視覚が駄目になってきたらしくて、暗くぼんやりと周りが見えなくなってきたからなのだけど。
「君に決定権は与えられない……すまなかった」
 なにを言ってるんですか。
 決定権なんて、アンドロイドにはない。それ以前に、人間にだって死ぬタイミングの決定権はない。
 それに、決定権なんてあったとしたら、きっと希望があることの辛さで狂ってしまうだろうから。
 今のままでいい。先が見えないくらいでちょうどいい。
 ……それを、伝えたいのに。
 もう動かせないなんて。
「今から、スリープ状態にする。もしももう一度目覚める時ができたら、君の世界はもっと明るいだろう。……そうなるよう、頑張ってみるよ」
 さようならという博士の呟きが聞こえた。
 そして。
 僕の身体は止まった。

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