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『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』文章保管用ブログ。
Posted by - 2024.11.22,Fri
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Posted by ささら - 2008.09.05,Fri

ミクとカイトの小話。初々しい。
時期は2月初旬。


「花火がバーンってあがってね、すごかったよ」
 ミクが手振りでそのすごさを伝えようと、大きく天井に向かって両手を広げる。
 相対するカイトは、顔を手元に戻したりあげたりとせわしなく動く。
 手元にあるものは本だ。タイトルは‘対位法入門’。
 入門という割には分厚い辞書のような本で、部屋に入ってきたミクがわかるの?と聞くと、カイトは首を横に振って、どうやって感想書こうかなと言った。
 そこでミクは気分転換になるようにと、秋にあった花火大会の話をし始め、現在に至るのだった。
「すごそうだね」
「うん、花が咲いたみたいな模様になるの。でも音もすごくて、耳が壊れるかと思った」
 耳を押さえるようなしぐさをすると、カイトは心配そうに眉を下げた。
「大丈夫だった?」
「調節機能があったから。それにステージの上で、バンドの人と一緒にやった時よりは音小さかったし」
「そっか。僕はそういうところに行った事がないからわからないんだけど、きっとそうなんだろうね」
 カイトは何気なく言う。余りに何気なかったせいか、逆にミクは自分が誰に何を言ったのかをはっきりと認識してしまった。
「……え、あ……うん」
(なんてことを言わせてしまったんだろう。カイトさんは、研究所の外に出られないんだ)
 見る見るうちに暗い顔になった。ミクは自己嫌悪で背を丸くし下を向く。
 カイトとしてはそんな気はなかったのだが、ミクは落ち込んでしまい、途方にくれた。
「……よくわからないけど、ごめん」
 結局口から出た言葉は微妙な謝罪だった。
 カイトもミクも話すというものに関して不器用だ。
 ミクはよくトークで詰まったり妙な返事をして、それがかわいいとファンには言われている。姉のメイコはうまく話すため、ボーカロイドがどうの、というのではなくミクの特性だろう。
 カイトはというと、他のボーカロイドとの会話では気をつかいすぎる傾向にある。要するに嫌われたくないだけなのだが、他者から見れば余所余所しい態度で、それが更に距離を広げている。
 この二人が何とかうまく会話を繋げられるのも、仲良くなりたいと思うミクの必死さによるものだ。近づくミクと距離を置こうとするカイトが、絶妙な距離を維持し続けていて、メイコなどにコントのようだと言われていた。
 また失敗した、と二人とも思った。どうしよう、とも思った。
 思った事は同じなのに全く通じ合っていない。その証拠に、夕飯の仕度だと言って料理担当の研究員が入ってくるまで二人は無言だった。
 距離が変わるまでの道のりはまだ遠い。



次:感想文なんて浮かばない
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