『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』文章保管用ブログ。
Posted by ささら - 2009.10.15,Thu
封筒が欲しいと彼女は言った3の裏話。親馬鹿×3。
昼間に出かけた山田博士とカイトは、ボーカロイドたちが寝静まった頃に帰ってきた。所長から状況を引き継ぐと、所長は眠たそうな顔で帰宅した。申し訳ない事をしたな、研究所に泊まればいいのに、などと二人は喋りつつ、玄関の置いてある二つのダンボール箱を囲んだ。
「みんなかわいいよねぇー。いやぁ、もう親馬鹿でもなんでもいいよ。だって自分たちから、お礼したいなんて言いだしたんだよ。いい子だ。かわいい、ホントかわいいなぁ」
目尻がひたすら落ち続けている博士は、箱を叩きながらそんな事を言った。ボンボンとダンボールが衝撃を跳ね返す音が響く。みんな目に入れても痛くないといった雰囲気で、まさに親馬鹿である。
「悲しませるような事にならなくてよかったですね」
カイトは内心呆れながらも、水を差さないように答えた。
「開発宛ての郵便は微妙だからね。多分検閲入るし」
「こちらでも入れなければならないのでは?」
「テキトーテキトー。所長もそういう方針」
相変わらず研究所は甘い人間ばかりだった。
「いい判断だったと思いますよ。少なくとも、僕は届かなかった事ばかりでしたし」
「出してたね。向こうでもやったのかい」
「向こうで三度、こちらで二度。内容について責められましたので、見られてはいるのでしょう。彼女から届いたという話も聞きませんでしたし」
「さあて、どうかな」
本当にそうか。本当に届いていなかったのだろうか。今度聞いておこうと博士は思った。しかしながら、届かない可能性が高いのも事実であるので、今回の作戦を変える気はない。
「それにしてもアレだね、結構気に掛けてるよね」
「どこまで薄情に見えてるんですか」
冗談には呆れた表情を。穏やかな夜半、彼らは荷物をまとめていく。
全員分の封筒を確認して、それぞれのダンボールに入れると、用意してあった大きめのメモ書きを一番上に載せた。これで誰の手紙が入っているのか、相手にもわかる。
意外だったのは、鈴木博士にも、田中博士にも、全員が出していた事である。カイトや博士の見立てでは、鈴木博士と、特にミクは相性が悪そうだった。あまり仲良くしていたという報告は受けていないため、たぶん、見立て通りの状況だったはずだ。それでも礼節を尽くそうという気概は、彼女たちの優しさや良心から生まれたものだと博士は考えていた。
博士はもう一度、感慨深く、いい子だと頷いて、手元にあったダンボール箱の口を閉める。カイトがガムテープを伸ばして蓋を閉めて貼り付け、箱の角も補強した。その間に、博士があて先を記入していく。宅配業者が配っている青っぽい紙にペンで書くと、下の紙へとインクが移っていった。
「よし、オーケーだ。これ貼って、明日出せば数日内には届くだろう。……ところで、今日の話だけど。多分最大三人、最悪一人だ。全員に付けるのは難しいから、しょうがないって事で、本当にガードとして働いてもらうかも」
「本社と特安の間で決める事でしょう。もしも、そういうものとして許可が下りるというならばいいですが、後付では下り難いと聞きますよ」
「所長が言うには下りそうって話だ。元々君らについて詐欺まがいの申請して怒られたから、本社もそれなりに懲りたんじゃないか?変に小細工するからこーゆー事になるのにねぇ。それに、今更隠す事なくなっちゃったし、むしろこっちがあの博士の資料欲しいくらいだよ」
残ってるものが少なすぎるよね、と博士はぼやいた。
そうかなとカイトはぽつりと言った。自身が特殊な物品だという自覚はあるが、価値があるとは思えない。博士が耳ざとく聞きつけ、何故か胸を張りながら、そうだよと答えたが、カイトの価値観は変わらなかった。得てしてそんなものである。
「壊すと言ったり、特殊だからデータを取ると言ったり、壊れてもいいと言ったり、盗まれたら困ると言ったり……どれなんでしょうね」
「隠したがったり、表に出すのを推したりね。まったく、本社と開発部の考えはさっぱりわからんねぇ。囮作戦を了承したと思えば、警備増やせってせっつくしー」
意外と、本社も後手後手の対応なのかもね、と博士は遠くを見る目で呟いた。
「みんなかわいいよねぇー。いやぁ、もう親馬鹿でもなんでもいいよ。だって自分たちから、お礼したいなんて言いだしたんだよ。いい子だ。かわいい、ホントかわいいなぁ」
目尻がひたすら落ち続けている博士は、箱を叩きながらそんな事を言った。ボンボンとダンボールが衝撃を跳ね返す音が響く。みんな目に入れても痛くないといった雰囲気で、まさに親馬鹿である。
「悲しませるような事にならなくてよかったですね」
カイトは内心呆れながらも、水を差さないように答えた。
「開発宛ての郵便は微妙だからね。多分検閲入るし」
「こちらでも入れなければならないのでは?」
「テキトーテキトー。所長もそういう方針」
相変わらず研究所は甘い人間ばかりだった。
「いい判断だったと思いますよ。少なくとも、僕は届かなかった事ばかりでしたし」
「出してたね。向こうでもやったのかい」
「向こうで三度、こちらで二度。内容について責められましたので、見られてはいるのでしょう。彼女から届いたという話も聞きませんでしたし」
「さあて、どうかな」
本当にそうか。本当に届いていなかったのだろうか。今度聞いておこうと博士は思った。しかしながら、届かない可能性が高いのも事実であるので、今回の作戦を変える気はない。
「それにしてもアレだね、結構気に掛けてるよね」
「どこまで薄情に見えてるんですか」
冗談には呆れた表情を。穏やかな夜半、彼らは荷物をまとめていく。
全員分の封筒を確認して、それぞれのダンボールに入れると、用意してあった大きめのメモ書きを一番上に載せた。これで誰の手紙が入っているのか、相手にもわかる。
意外だったのは、鈴木博士にも、田中博士にも、全員が出していた事である。カイトや博士の見立てでは、鈴木博士と、特にミクは相性が悪そうだった。あまり仲良くしていたという報告は受けていないため、たぶん、見立て通りの状況だったはずだ。それでも礼節を尽くそうという気概は、彼女たちの優しさや良心から生まれたものだと博士は考えていた。
博士はもう一度、感慨深く、いい子だと頷いて、手元にあったダンボール箱の口を閉める。カイトがガムテープを伸ばして蓋を閉めて貼り付け、箱の角も補強した。その間に、博士があて先を記入していく。宅配業者が配っている青っぽい紙にペンで書くと、下の紙へとインクが移っていった。
「よし、オーケーだ。これ貼って、明日出せば数日内には届くだろう。……ところで、今日の話だけど。多分最大三人、最悪一人だ。全員に付けるのは難しいから、しょうがないって事で、本当にガードとして働いてもらうかも」
「本社と特安の間で決める事でしょう。もしも、そういうものとして許可が下りるというならばいいですが、後付では下り難いと聞きますよ」
「所長が言うには下りそうって話だ。元々君らについて詐欺まがいの申請して怒られたから、本社もそれなりに懲りたんじゃないか?変に小細工するからこーゆー事になるのにねぇ。それに、今更隠す事なくなっちゃったし、むしろこっちがあの博士の資料欲しいくらいだよ」
残ってるものが少なすぎるよね、と博士はぼやいた。
そうかなとカイトはぽつりと言った。自身が特殊な物品だという自覚はあるが、価値があるとは思えない。博士が耳ざとく聞きつけ、何故か胸を張りながら、そうだよと答えたが、カイトの価値観は変わらなかった。得てしてそんなものである。
「壊すと言ったり、特殊だからデータを取ると言ったり、壊れてもいいと言ったり、盗まれたら困ると言ったり……どれなんでしょうね」
「隠したがったり、表に出すのを推したりね。まったく、本社と開発部の考えはさっぱりわからんねぇ。囮作戦を了承したと思えば、警備増やせってせっつくしー」
意外と、本社も後手後手の対応なのかもね、と博士は遠くを見る目で呟いた。
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